経産省がJIS制定。馬乗りできる電動車椅子に高まる期待

経産省がJIS制定。馬乗りできる電動車椅子に高まる期待 Report
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9月23日に経済産業省が馬乗り形の電動車椅子に対するJIS規格の安全要求事項として制定し公示しました。移乗・移動が容易となる利点があることは明確で、普及途上ということから製品仕様に対し安全要求事項が制定されたものです。ここでは制定内容と対象となった馬乗り形電動車いすの概要を取り上げます。
  

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日本発、世界に通用する規格。より安全性の高い製品開発が可能になる

日本の産業製品に関する規格や測定法などが定められた日本の国家規格であるJIS規格(日本産業規格)。自動車や電化製品など産業製品生産に関するものから、文字コードやプログラムコードといった情報処理、サービスに関する規格などもあり、日ごろあまり馴染みの薄いものにもJIS規格が存在しています。
そうしたなかで、新たに安全要求事項が制定された馬乗り形の電動車椅子は、介護者に過度な負担となるベッドからの移乗・移動が容易となり、被介護者の自立支援と介護者の負担軽減が大いに期待されています。
  
JIS制定された馬乗り形電動車椅子は、これまでのベッドから車椅子への移乗にともなう、半立ち状態で腰を浮かせて半回転して座面に移る動作を必要とせず、そのまま前に覆いかぶさるように車椅子の後部から移乗できることが大きな特徴です。
これまで移乗する過程で、特に足の弱った高齢者や障害者はバランスを崩して転倒する事故が発生していますし、介護者も抱きかかえて介助作業することから腰痛を発症してしまうなど、大きな負担となっていたものです。

従来の車椅子にともなう移乗の動作。被介護者に無理を強いる、支援する介護者の負担も大きく、介護現場の大きな課題に(経済産業省の資料より)

経産省によると、今回JIS制定された目的には、普及途上で製品仕様もまだ固まっていないため、製品設計プロセスにおいてリスク低減を図る安全要求事項を定めた規格(JIS T921)を制定したということです。
  
(※)
・この規格での安全要求事項とは、リスクアセスメントによって同定された重要な危険源に対し、“本質安全設計”“安全防護及び付加保護方策”“使用上の情報”によってリスク低減方策を規定したもので、それら危険源に伴うリスクの排除、またはリスクを最小限にするための安全設計の基準です。
・馬乗り形電動車椅子のJIS規格は、2017年に新市場創造型標準化制度(※2)の適用となり、この度の制定に至りました。日本産業標準調査会(JISC)のHP(http://www.jisc.go.jp/)から、「T9210」でJIS検索すると本文を閲覧できます。

(※2)新市場創造型標準化制度は、中堅・中小企業等が開発した優れた技術や製品を国内外に売り込む際の市場での信頼性向上や差別化などの有力な手段となる、性能の評価方法等の標準化を支援する制度。
  

JIS制定の主なポイント (経済産業省による資料より抜粋)

① 製品用途
この製品の多くは屋内で想定されることから、用途を屋内移動用に限定し、その使用場所は、主
には介護施設、医療施設及び使用者の住宅を想定しました。
② 使用者
この製品が普及途上であり、具体的な使用者を想定することが困難であったため、使用者の身体
などの条件によって、使用可能又は使用不適の具体的条件をユーザーマニュアルに記載するよう規定しました。
③ 安全要求事項
この製品は移乗機能と移動機能とを備えていますが、移乗時の転倒事故等の危険性があることか
ら、特に移乗機能に着目して安全要求事項を規定しました。この安全要求事項は、「使用時」と「構造・機構面」のそれぞれの側面において重要と考えられる危険源(リスク)を示したうえで、各危険源を、「本質安全設計」、「保護方策」及び「使用上の情報」の3ステップでリスク低減する方策を規定するとともに、その要求事項を満たしているかの妥当性を確認することを求めています。
  
<期待される効果>
このJISの制定により、馬乗り形電動車椅子の安全性要求事項の標準化を図ることができ、各社によって安全性に十分配慮した製品開発が行われ、新たな市場を創造できるとともに、医療・介護の現場において被介助者の自立支援や介助者の負担軽減に大きく貢献することが期待されます。

経産省がJIS制定。馬乗りできる電動車椅子に高まる期待
馬乗り形電動車椅子の移乗イメージ(「RODEM」による参考イメージ)

馬乗り形電動車椅子の代表格「RODEM」

馬乗り形電動車椅子の開発といえば、2017年に福岡のベンチャー・テムザック(宗像市)が2017年に発表した「RODEM(ロデム)」が第一人者ともいえる存在。今回のJIS制定にも大きく貢献しています。
  
「RODEM」の開発は、同社の代表である髙本陽一氏が2009年、当時の九州大学病院リハビリテーション部の高杉紳一郎准教授からある相談をされたことがきっかけに。その内容こそ“リハビリ時の移乗の課題を解決したい”ということで、馬乗り形の発想に直結する相談だったといいます。
そこからいくつかの試作機をつくり、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を受け、デンマークで実証実験を行うに至り、2017年の発売にこぎ着けたものです。

経産省がJIS制定。馬乗りできる電動車椅子に高まる期待
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「RODEM」外観

JIS制定された今回の発表について、同社では
「弊社では、長年、要介助者の移乗の課題解決に着目し、この規格が必要と、その制定に向け活動を続けておりましたので、長年の思いが結実いたしました。
今回のJIS制定によって馬乗り形電動車椅子においてもリスクアセスメント評価による、機器のリスク低減が図られることで、安全性に十分配慮した製品開発が行われ、新たな市場の創造と、高齢者福祉などへの貢献に大きな前進となることが期待されます」
と伝えています。

  
“質の高い生活を、すべての人に”をコンセプトに、少子高齢社会の中で介助者・被介助者双方の負担を減らし、誰もが暮らしやすい社会を実現したいとの想いで開発された「RODEM」に代表される電動車椅子。移乗がスムーズになるほか、歩行者と視線の高さが合わせやすく会話しやすい、生活空間を広げ自立度がアップ、前傾姿勢により気持ちが前向きになる、といったメリットもあるといいます。
  
JIS制定で安全性が標準化されることで、新たな製品が開発され市場が活性化されるなど大きな期待が寄せられています。