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ICTで見守り・家庭の電力データ活用が有効

ICT・テクノロジー

北海道沼田町で約3年間にわたり実施した、産学官連携によるICT活用の住民見守りシステムの実証実験。生体データではなく家庭の電力データの活用が健康の見守り、行動変容を促すために有効であることがわかりました。

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産学官連携によるICTを活用した健康づくり・見守り支援事業

健康・行動の見守りに有効なデータは、生体データよりも家庭の電力データ―(※1)。北海道沼田町でおよそ3年間にわたった実証実験から、そうした結果が判明しています。
(※1)エアコン、電子レンジ、洗濯機などの家電の電力使用データ

実験をおこなったのは、奈良県立医科大学発スタートアップ企業のMBTリンク(奈良県橿原市)と東京電力グループのエナジーゲートウェイ(東京都港区)。
両社は2019年から約3年間、北海道沼田町のミドル・シニア(主に50代~60代)約25名の住民を対象にICTデバイス等を活用して収集した個人の健康・生活・行動・嗜好等に係るデータを医学的知見を活かしながら解析。それらデータが沼田町民の健康促進、予防促進に寄与するか、ICTデバイス活用が健康づくりの手段となり得るか検証したものです。

実証実験では家庭の電力データをライフスタイルスコア(LSS)(※2)として以下3つのカテゴリーにわけ、1分単位でスコアを計測しました。

・生活スコア(エアコン、テレビ、待機電力など)
・食事スコア(電子レンジ、冷蔵庫、炊飯器、IHなど)
・活動スコア(洗濯機、掃除機、高電家電など)

(※2)ライフスタイルスコアとは、電力消費データをもとに、生活、食事、活動、その他の4群にわけ、それぞれのライフスタイルスコアを評価。発生頻度、行動周期性、実施時間帯など過去実証データをもとに客観的評価を行い、スコア化したもの。LSSは0-100点からなり、スコアが大きいほど規則正しい健康的なライフスタイルであることを意味します。

「家電データ」を見守りにどのように活用したか

1分単位で家庭の電力使用量をモニタリングすることで、その住民の日常行動が見えてきます。
起床時間や睡眠時間、掃除機や洗濯機、電子レンジを使っている時間等々の時間軸から生活スタイルが把握できます。

電力データはその住民の「素」の生活データであり、何らかの変化を見ることで「未病」や「認知症」の兆候を捉えて、その住民に通知することで「行動変容」を促すことができるわけです。
また、こうした電力データからは、節電対策のヒントも得られたといいます。

3年間にわたる実証実験により以下のような結果を得ることができています。

(1) 不調に向かう人の予兆観測が可能に

  • 食事スコア、活動スコアに影響が出た後に、生活スコアに不調が及ぶ。
    そのため、食事スコアと活動スコアの日常数値から逸脱に注意が必要。
  • 特に活動、食事スコアの急激な低下、低スコアが続く方にはとくに注意。
    寝たきり、認知傾向が進んでいる可能性があり、本人・家族への通知が必要。
  • 活動スコアが常に一定数より低い方は衛生面のサポートが必要で、第三者の介入ベター。
    体調不調傾向、自宅にゴミが多い、掃除が出来ていない、衛生面で問題ありの状況で、自治体との連携が必要。
  • ライフスタイルスコアの上昇、3ヵ月継続の方は体調回復、健康改善、不調改善傾向が強い。
ICTで見守り・家庭の電力データ活用が有効

スコアの事例

(2) 対象者の健康意識・行動の変化など(参加者アンケートより)

  • 自分でも気が付かなかった季節によるライフスタイルへの影響、変化を知れ、自分の生活改善点が分かった。
  • ライフスタイルスコアに加え、食事、活動、生活スコアが知れ、スコアの低い行動においては、規則正しい生活をより心掛けるようになった。
  • スコアが良いことを知れ、日々の生活に自信が持てた。日々の生活の積み重ねが健康にいかに重要か痛感している。これからも良き習慣は継続したい。成果に対し、ポイント(※3)もいただけありがたい。
    (※3)「沼田町行政ポイント」。町民2000人以上が加入し、町民は町商工会が発行するポイントカード(Numaca)を所持している。Numacaは商店で買い物をした際に購買ポイントが付くシステム。町行政と連携しており、町主催の様々な健康事業や介護予防事業、健診、ボランティア、イベント等に参加したインセンティブとして町が「行政ポイント」を付与する。
  • 継続評価していただき、ライフスタイルの変化を把握、改善出来るため行動が変えやすい。アドバイスもありがたい。
  • 電力料金も気になっていたので、機器の配置場所、買い替えの参考になり有用。
  • 生活が見られている気がするがカメラよりは良く、家族にも自分の状態をリアルタイムで知ってもらえ安心し生活出来る。特に、冬は家族ですらなかなか来れない地域であり、これらデータの活用は便利、ありがたかい。
  • 設置するだけでその後は普段通りの生活、簡単、手間いらずでサポート面でも優れているサービス。

(3) 町や関係者への有用性(実証実験に対するご意見)

― 遠方に住んでいる家族より

  • 高齢者の家族が、アプリを通じて親のライフスタイルを確認することが出来て安心する。
  • 認知傾向を心配しているが、客観的に各スコアを通じ影響度を把握できるため大変参考になる。
  • それによる対応策も練りやすい。
  • 手術後など独居生活の親のライフスタイルを知れ、サポート面においても無駄が省け非常に助かる。
    素晴らしいサービス、普及して欲しい。

― 町の担当者より

  • ライフスタイルスに季節、地域性が反映され、集団データからその特徴、新たな気づきがあった。データの蓄積をすることで地域に役立つ情報になることは間違いないと確信した。また、個々へ起こり得ることへの事前アドバイスが可能。、コメントの質が高まり、個の理解も進み、結果的に行動変容が期待出来、良いスパイラルが生まれた。

沼田町 横山 茂町長のコメント
「この取り組みが更に発展していき、医療費の削減や要介護認知者数の減少により減った費用を、地域住民へ還元できる仕組みなども検討を進めていきたいと考えております。
また、現在の取組みを活かして、電力の削減など見守り以外への展開も出来るのではないかと期待をしているところです。」

本事業は、今年度から積極的に見守り支援事業の展開を実施。自治体だけでなく、民間企業や他大学との共同研究も予定されています。

実験で利用した電力センサと家電分離のしくみ
電力センサは分電盤に収納でき、30分程度の簡易工事で設置することが可能。
電力センサで取得されたデータは、Wi-Fiを通じてクラウドにデータが転送され、AIによってどの家電が、どれぐらい使用されているのかをリアルタイムに把握することができる。
電力データは専用アプリに送信され、家族ともデータ共有が可能。

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電力データ

・関連リンク
株式会社エナジーゲートウェイ NEWS記事
https://www.energy-gateway.co.jp/news/2023/05/16.html

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