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高齢運転者をロボットがサポート―同乗者として安全促進への取り組み進む

高齢運転者をロボットがサポート―同乗者として安全促進への取り組み進む ICT・テクノロジー

2023年1月に実施されたクルマの先端技術展「オートモーティブワールド」で、ユカイ工学がロボットで高齢運転者の事故を防止するという活用法を提唱していました。産学連携による実証実験も進むロボットの新たな高齢者支援策を取り上げます。

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同乗者の存在が高齢運転者の事故防止につながる

「高齢者と車」というと、どうにも自動車事故が想起されます。
よくアクセルとブレーキの踏み間違いなど操作不適がによる原因が伝えられますが、警視庁による2021年の統計でみると(※1)、65歳以上の運転者が事故時に違反していたのは「安全不確認」が36.7%ともっとも高くなっています。
ちなみに、「ハンドルやブレーキの操作不適」は「交差点安全進行」(17.0%)「前方不注意」(11.0%)に次ぐ7.3%です。

そうした違反につながった人的要因を見ると、「脇見や考え事をしていたことなどによる発見の遅れ」が81.6%と多数を占める結果に。
注意力や集中力、瞬間的な判断力の低下などに加え、一般的には加齢に伴う動体視力の衰えや反応時間の遅れなど身体機能の変化が考えられます。

もっとも高齢運転者による交通事故は今に始まったことではなく、10年ほど前の2012年における発生件数は、4,370件だった2021年の約1.5倍となる6,600件もの事故が発生していたほど。
そうしたなか、交通事故総合分析センターや大学などで、同乗者の存在と事故発生率の関連性をテーマとした実証や研究がおこなわれてきました。

以前のデータながら、交通事故総合分析センターによる調査(※2)では、65歳以上の高齢運転者の事故発生率は1名以上の同乗者がいることで低下する傾向にあることがわかっています。同乗者の事故防止効果の理由として、
“同乗者による認知能力面での運転支援、同乗者が存在することで運転が慎重になる”
などが考えられています。

(※1)警視庁「防ごう!高齢者の交通事故!」
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/koreisha/koreijiko.html
(※2)財団法人交通事故総合分析センター「イタルダ・インフォメーション No.77」(2008)
https://www.itarda.or.jp/contents/461/info77.pdf

同乗者の役割をロボットが担う

安心安全の追求に向け、自動車業界では最新技術を活用した運転支援機能への取組みがおこなわれています。
歩調を合わせるように進んでいるのが、コミュニケーションロボットの活用。同乗者の存在が事故防止につながるとの視点から、ロボットが同乗者となって高齢運転者の事故を防ぐという取り組みです。
その1社がユカイ工学(東京都新宿区)。多くのコミュニケーションロボットやIoTプロダクトを企画・開発するロボティクスベンチャーです。2021年から提供している『BOCCO emo(ボッコ エモ)』をインターフェースに、ロボティクス技術を活用しやすい形で開発者向けに提供する『BOCCO emo プラットフォーム』の応用分野としての取り組みが進んでいます。

高齢運転者をロボットがサポート―同乗者として安全促進への取り組み進む

ロボットによる高齢者の運転支援を提唱するユカイ工学。2023年1月25日~27日に行われた「オートモーティブワールド」(主催:RX Japan株式会社)にて。

高齢運転者をロボットがサポート―同乗者として安全促進への取り組み進む

展示ブースで紹介される「BOCCO」。左がBOCCO emo。

「BOCCO emo プラットフォーム」は、このロボティクス技術を活用しやすい形で開発者向けに提供するもので、一般家庭向けから企業や行政、ヘルスケアなどの様々な社会課題解決のためのサービスで活用が始まっている『BOCCO emo プラットフォーム』。世界的にも評価され、世界最大のテクノロジー/イノベーションの祭典「CES」(米国・ラスベガスで開催)で『CES 2023 イノベーションアワード』を受賞しています。

『BOCCO emo プラットフォーム』の特長は、ほかのソフトウェアやプログラム、Webサービスとの間をつなぐインターフェース(API)群が用意され、開発者によるオリジナルのアプリケーション開発が容易におこなえる点。
例えば人を検知するレーダーは、ロボットの周囲の人の動きを検知することができるほか、他のマイク、照度センサ、振動センサの情報と合わせてユーザーの生活状態を推定する独自のアルゴリズムを提供。これにより環境の状態を把握し、適切なタイミングでユーザーへの声掛けを可能にしています。

名古屋大学をはじめ、ロボットを活用したヒューマンマシンインターフェース(HMI)として大学でも研究が進んでおり、製品化・サービス化による社会実装をゴールに産学連携による実証実験も行われてきています。
ペットにも似た愛情を抱きやすい親しみやすさのあるコミュニケーションロボットは、適切に指図したり話し相手になったり、運転者側がわずらわしさを感じることがなく受け入れやすい対象であることが判明しています。
もちろんロボットだからできることが多々あり、前方車両との車間距離を測定し「速度は大丈夫ですか?」と運転修正を促す、交通標識を認識して「そろそろ一旦停止がありますね」と注意喚起するなど、ロボットの機能や特性に見合った運転支援が可能になってきます。

社会実装はまだ先のことになりそうですが、いろいろな介護シーンでの活用が期待されるコミュニケーションロボットの新たな側面として期待されます。

「BOCCO emo」紹介サイト
https://www.bocco.me/
ユカイ工学 企業サイト
https://www.ux-xu.com/

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