動き始めた東京都大学提案プロジェクト

動き始めた東京都大学提案プロジェクト Report
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ヘ~ナンさんによる写真ACからの写真

提案制度の概要と、AI・IoTを駆使した認知症BPSD症状の事前予測へのチャレンジ

東京都は2019年、「大学研究者による事業提案制度」として、都内大学研究者を対象に研究成果・研究課題等を踏まえた事業提案を募集しました。都に集積されている「知」を、都政の喫緊の課題解決や東京の未来の創出に資する政策立案へと活用を目指したものです。
採択したプロジェクトに対し、都が支援するのは、単年度あたり3000万円を上限とした経費支援、都が有する施設等の提供、研究成果等を活かした連携事業の実施(単年度あたり上限2億円)となっています。(支援は原則2年内、最大で3年間)
  

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どんな採択案が?「大学研究者による事業提案制度」概要

東京都による「大学研究者による事業提案制度」概要を押さえておきましょう。
  

動き始めた東京都大学提案プロジェクト

<対象分野>
防災力の向上、都市インフラの整備
まちの元気創出、安全・安心の確保
少子・高齢化等を見据えた東京のまちづくり
医療が充実し健康に暮らせるまちづくり
環境先進都市・東京の実現
東京の経済活動、農林水産業の活性化
国際観光都市・東京の実現
  
61件の提案があり、採択されたのは次の6件で2020年度予算案に反映されます。
  
【医療が充実し健康に暮らせるまちづくり】
◎世界トップレベルの地域医療を東京に構築する事業(期間3年)
概要:すべての都民が安心して暮らせるように、どこでも何時でも病院、在宅、救急等で活躍する総合診療医等を各地域で育成し、さらに様々な医療や介護に関わる人たちが協働し、世界トップレベルの包括的な地域医療を東京に構築します。
  
【少子・高齢化等を見据えた東京のまちづくり】
◎AIとIoTにより認知症高齢者問題を多面的に解決する東京アプローチの確立(期間3年)
概要:認知症高齢者、家族、介護者を支援する社会システムを構築する。AIが家庭・介護施設・病院でのリアルタイムかつミクロな生体・行動データから暴言、暴力、徘徊などの予測・対処・治療法を発見し、24時間、本人、家族、介護者を助ける。
  
◎都営住宅等を活用した単身高齢者の見守りシステム構築・実証プロジェクト(期間2年)
概要:都営住宅の単身高齢者の見守りシステムの構築をモデル実施。スマートメータの電気量データから在/不在、異常値、エアコン利用有無をAI(機械学習)で判断する。孤独死が増加している単身高齢者の巡回管理の見守りをサポート強化する。
  
◎大学と自治体、企業、NPOの協働による高齢者の福祉向上を目指した動物との共生社会の実現と拠点形成(期間3年)
概要:東京都では全国一の高齢者問題が発生しています。安全で従順な動物介在活動適格伴侶動物を診断・訓練・治療等で確保し、動物介在活動による高齢者の健康寿命の延伸等、福祉対策の一助となるよう動物との共生社会の拠点を形成します。
  
◎児童相談所情報標準化・人材育成事業(期間3年)
概要:児童相談関連事業の情報を標準的・定型的に収集するための情報項目・粒度などの要件を明らかにし、虐待リスク判定の精度を高める情報収集と共有化を実現する情報システムの仕様を作成、併せて児童相談担当職員の能力向上・育成を図る
  
【防災力の向上、都市インフラの整備】
◎市民科学プログラムによる都市型水害に備えるアイディアの実践(期間3年)
概要:豪雨対策と環境改善の両立を目指した「水辺や緑の活用・管理のあり方」を、市民科学プログラムにより提案します。都民・企業・行政・大学など、流域に関わる多様な主体との協働によって、都市型水害に備えるアイディアを実践します
  

BPSD発生メカニズムを解析し発症の事前予測を目指す

ここでは採択案の中から、電気通信大学から提案された先進テクノロジーを駆使する「AIとIoTにより認知症高齢者問題を多面的に解決する東京アプローチの確立」に着目してみます。
   
対象とした少子高齢化の問題のひとつにあがるのが認知症。その問題に対し、高齢者自身とその家族、介護者といった関わる人たち全員のQOL(生活の質)向上をゴールに、AI・IoTといった最新テクノロジーを駆使したパイロット事業を推進、「東京アプローチ」として都全域で実施するためのシステムや制度設計を提言しようというものです。
  

動き始めた東京都大学提案プロジェクト
感謝状贈呈式で小池百合子都知事を囲んで写真に納まる授賞者(左)。電気通信大学からは研究代表者として田野俊一情報理工学研究科長が出席(右)※画像は電気通信大学のホームページより

物忘れなどさまざまな症状が現れる認知症は、深刻な症状になってくると、暴力や暴言、幻覚、妄想、失禁など行動・心理症状(BPSD/周辺症状)が目立つようになります。介護する側からは最も大きな問題であり、これらの症状にどのように対応していくかが最大の難問となっています。
  
そこで発想されたことが、BPSDの発症の事前予測。BPSDの発症を事前に予測できれば、周囲の家族や介護者が事前にケアをすることができるようになり、落ち着いて穏やかに接せられると考えられています。
  
本提案は、“認知症患者の示すさまざまな症状の発生メカニズムを人工知能で解析することで、BPSDの発症の事前予測が可能である”との仮説がもとになっているものです。
  
提案にあるパイロット事業は、AIとIoTを用いて認知症の発生・進行プロセス、認知機能障害、BPSD防止支援策を導き支援を行うため、都内の家庭・介護施設・病院を対象に一定規模(対象高齢者約1000人)で実施する計画となっています。
  

動き始めた東京都大学提案プロジェクト

エッジコンピューティング技術を備えるTISが参画へ

本プロジェクトのグループは、電気通信大を中心に医療、介護、人工知能、情報システム、ネットワークに強みを持つ大学、企業で構成されています。
直近の動きとしては、TISインテックグループのTISが参画を表明しました。IoTデバイスおよびBAN(Body Area Network)型ウェアラブル機器を活用する新しいネットワーク規格の設計・実装に加え、センサーの近くに分散配置された計算機で効率的な計算を実現するエッジコンピューティング実現を目指すとしています。
  
TISでは、「コア技術戦略」に基づきITによる社会課題解決の取り組みとして、ヘルスケア(健康増進)領域における情報システムの研究開発を行っており、プロジェクトへもその一環として参画。ウェアラブルセンサーデバイスから生体情報を集めるBAN型の無線通信システム、集めたデータをクラウドに蓄積するためのエッジコンピューティングシステムの研究開発を担うものです。
  

動き始めた東京都大学提案プロジェクト

AIとIoTにより認知症高齢者の新たな対処方法が発見され続けるため、認知症高齢者のQOL向上、家族・介護者の負担軽減が常に強化される本プロジェクト。
そのほか採択されたプロジェクトともども大きな期待が集まっています。
  

▼関連リンク
東京都財務局「大学研究者による事業提案制度」実施要項(PDF)
https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/zaisei/teian/2daigaku/00_zissiyoukou.pdf
東京都財務局「大学研究者による事業提案制度」採択結果
https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/zaisei/teian/2daigaku_kekka.html
採択課題「AIとIoTにより認知症高齢者問題を 多面的に解決する東京アプローチの確立」(PDF)
https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/zaisei/teian/2daigaku/daigaku2.pdf
電気通信大学お知らせ「【報告】東京都の大学研究者による事業提案制度に採択」
https://www.uec.ac.jp/news/announcement/2020/20200225_2408.html
TIS株式会社
http://www.tis.co.jp/