2022年1月5日(水)から米ラスベガスで開催された世界最大規模のテクノロジー見本市「CES」。今回大阪のテック企業が独自開発したエッジAIプロセッサを活用したデモンストレーションを披露し好評を得ました。介護分野への応用も期待される同社の技術を取り上げます。
日本企業も多数出展、トピックスは大手メディアでニュースに
「CES」は、米国ラスベガス(ネバダ州)で毎年1月に開催される界最大規模のテクノロジー見本市。Consumer Technology Assosiationの略で、CESはテレビニュースなどでは“シーイーエス”と発音されますが、エレクトロニクス業界では“セス”と発音されることが多いようです。
海外の展示会とはいえ、例年日本からもナショナルブランド、テック企業、スタートアップなど多くの企業が出展し、技術力を示す試作品やデモンストレーションを披露します。
1月5日から7日までの3日間に実施されたCES2022は、各国から2300社強の企業が出展。新型コロナの影響で例年の4分の1にとどまったものの、展示会場は4万人超の来場者が集ったと発表されています。
会期中には、ソニーグループが電気自動車(EV)の事業化を検討することを表明したり、パナソニックのメタバース市場への本格参入を意味するVRグラスなどの製品(100%子会社のShiftallが製品化)を展示紹介した話題は、テレビや新聞など大手メディアがニュースで報じたことで、記憶されている人もいるでしょう。
またスタートアップ企業を対象とした展示会場もあり、ロボット、AI、家電などの分野での取り組みが展示紹介されました。日本貿易振興機構(JETRO)が日本企業のPRの場として開設しているJ-Startup/JAPANパビリオンもあり、ここには52社のスタートアップが出展しました。
多くの日本企業も注目を集めた中で、今後介護の分野での応用が期待される技術を展示紹介したArchiTekの技術を取り上げます。
エッジAIをリードする技術力に期待高まるArchitek
大阪のスタートアップであるArchiTekは、アーキテクチャやアルゴリズムを研究開発する企業。スマートシティ、スマートケア、スマートファクトリー、スマートリテール、スマートアグリなど多彩な分野でDX(Digital Transformation)の核となるエッジAIプロセッサ「AiOnIc®」(アイオニック)を開発しています。
「エッジAI」は、ネットワークにつながったエッジデバイスと呼ばれる端末自体に判断ができる人工知能・AIを搭載した機器。IoT環境でのデバイスや自動運転車など判断が必要になる機器に学習用モデルを実装することで、そのデバイスだけで異常か正常かの分析・判定ができたり、予兆保全が行えるようになります。
ArchiTekが開発した「AiOnIc」に搭載されているのは、製品名に社名も含めた独自開発アーキテクチャ(プロセッサの基本構造)「aIPE(ArchiTek Intelligence® Pixel Engine)」。ハードウェア部品を動的に組み替えることで、さまざまなアルゴリズムに柔軟に対応でき、既存のCPU、GPU、専用LSIの長所を兼ね備え、リアルタイムに複数処理の同時実行が可能です。
世界で開発されているエッジAIプロセッサをリードする新しい構造とされ、小型・低消費電力に加え高効率処理であることが特徴となっています。
CES2022では、「AiOnIc」を活用したAIカメラキット、自動運転に不可欠なSLAMと呼ばれる処理のデモンストレーションを実施しています。
SLAMとはSimultaneous Localization and Mappingの略で、移動体の自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術の総称です。
汎用CPUと比較した処理時間は1/20に短縮、AIでの骨格・姿勢推定アルゴリズムの実行では汎用GPU製品と比べ、数倍の動作速度の向上を可能としています。
AIカメラキットを米国の警察官が身に付けるBody Worn Cameraに模した小型デバイスによるデモンストレーションでは、通行者の姿勢推定や物体識別するなどのAI処理を実施、デバイスのサイズ感や処理の速さ、モバイルバッテリーで動作可能な電力性能について大きな反響があったといいます。
世界に向けたトライアルの場となったCES出展について、代表取締役 兼 CTOの高田周一氏は次のようにコメントしています。
「弊社は日本の半導体企業として国内で製造しておりますが、本当は半導体は世界に出ないといけないと考えており、米国でのCESに出展いたしました。
弊社の半導体は世界におけるシリコンバレーや他のベンチャー企業にも必ず勝てるチップだと考えております。
その良さを知っていただいて弊社の活動の場を皆さんに考えていただくことと、我々も提案しながら一緒になって開発をお手伝いしていきたいと思います。」
また、画像処理から人の感情を読み取る、危険行動を察知する、といった安全安全面での活用に適していることから、介護施設での入所者の見守りはじめ介護分野での応用に大いに期待されます。