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在宅でのフレイル予防につながる事例も―旭化成ホームズが入居者の実態調査を報告

在宅でのフレイル予防につながる事例も―旭化成ホームズが入居者の実態調査を報告 調査

旭化成ホームズシニアライフ研究所が、提供するシニア向け賃貸住宅「ヘーベルVillage」で自立生活を送る後期高齢者を対象に健康度と暮らしに関する調査を実施、結果の公表と合わせ、ニューノーマルの時代に在宅でもできる健康寿命延伸への取り組みについて報告しました。

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自立生活を送る後期高齢者の健康度とくらし方との相関を探る

旭化成ホームズ(東京都千代田区)のシニアライフ研究所は、超高齢社会における長い高齢期を心豊かに暮らすための住まいやサービスを研究する目的で、2014年に設立されています。
高齢者を対象に生活や住まいの調査研究を続ける一方、自立期の元気な高齢者の住まいづくりに早くから着目し、2005年から元気なシニア向け賃貸住宅「ヘーベルVillage」の提供を開始しています。1都3県で展開され、昨7月には住戸が1,200戸を超えたそうです。

在宅でのフレイル予防につながる事例も―旭化成ホームズが入居者の実態調査を報告

へーベルVillageの居室と設備

今回、その「ヘーベルVillage」の入居者を対象に調査を行ったわけですが、施設の運営目的に沿った後期高齢者(75歳以上)、元気な「プレフレイル」のシニアが多く、この層への生活実態や意識に関するデータはまだ珍しいことから、調査の実施に至ったと言います。

さらに、介護やフレイル予防の第一人者とされる大渕修一氏との共同研究を実施することで、高齢者の実態に即した実効性の高いフレイル予防策と今後の事業、研究継続に向けた有効な知見を得ることを目指したものです。

大渕 修一氏 プロフィール
介護予防の第一人者で、専門は、理学療法学、老年学、リハビリテーション医学など。厚生労働省の介護予防制度立ち上げ時から携わり、2015年の介護保険法改正により「地域ケア包括システム」のひとつの事業として創設された「介護予防・日常生活支援総合事業」においてサービス利用を決める「基本チェックリスト」の作成にも関わる。第72回保健文化賞受賞。
調査の概要
調査の目的:健康度ごとの生活実態の把握と、空間・サービス設計の条件を明らかにする
調査時期:2019~2021年
調査方法:アンケート調査・測定調査(お達者健診PLUS)・面談記録分析・インタビュー調査
調査対象:ヘーベルVillage入居者
調査対象数:ヘーベルVillage13棟159名(内測定参加者146名・インタビュー調査6名)

 

調査結果サマリー

  • 健康度が低いほど外出や運動の習慣が減少し、転倒の経験や不安が増大。コロナ禍の外出自粛が傾向に拍車
  • 食事は、健常者に比べてプレフレイル(前虚弱)入居者で、食欲が減退している比率が増加
  • 健康度の後退と比例して、家族との交流頻度が増える一方、友人との交流が減少。交流の変化がフレイル化の兆候をはかるバロメーターのひとつに
  • 日常の生活行動を「運動」のチャンスとする事で、自宅に居ながら運動の機会を確保することが重要
  • 食事好きな人は食をきっかけとした交流でいっしょに外出するなど、運動・食事・交流のどれか一つが好きならその他と組み合わせることでフレイル防止効果がアップ

 

主な調査結果

(旭化成ホームズ株式会社 2022年1月11日ニュースリリースより転載)

健康度が低いほど外出や運動の習慣が減少し、転倒の経験や不安が増大。コロナ禍の外出自粛が傾向に拍車

健康度は、J-CHS基準を用いて、「ロバスト(健常)」「プレフレイル」「フレイル」の3区分で集計しました。その結果、健康度が低いほど、外出頻度では39pt、軽い運動・体操の習慣では69pt、スポーツの習慣では52pt、実施している割合が低いことがわかりました。
一方で、健康度が低くても外出の頻度が高い人や、運動習慣がある人は存在しており、どのような内容で、運動に関わる行動が行われているのか、くらしの中での実態把握が重要です。運動の内容に着目したケーススタディの結果、健康度によって運動の強度が異なることがわかりました。ロバストでは散歩やウォーキングに加え、テニスやゴルフ、登山など「強度の高い」運動が行われている一方、プレフレイル・フレイルでは、買い物ついでのウォーキングや散歩が主体となり、ロバストと比較すると強度の低い運動が行われていることがわかりました。

在宅でのフレイル予防につながる事例も―旭化成ホームズが入居者の実態調査を報告

健康度別 外出頻度・運動習慣・転倒不安・転倒経験の有無(健康度と運動との関連性)

食事は、健常者に比べてプレフレイル(前虚弱)入居者で、食欲が減退している比率が増加

食事で、健康度ごとの差が顕著なのは、「食欲」でした。食欲があるとする回答は、ロバストの53ptから、プレフレイル39pt、フレイル29ptまで低くなっています。
一方で、10品目中7品目の多品目摂取についてはロバストからプレフレイルで8.3ptの減少に対し、プレフレイルからフレイルでは29.9ptと大幅に減少しています。食欲の低下に対し、多品目摂取ではプレフレイルでの減少が少なく、「少量でも多品種を」といった行動がとられている可能性があります。なお、自分で食事を用意する頻度では健康度による差がなく、低い健康度でも維持されている傾向が見られました。食事に着目したケーススタディの結果、健康度によって「外部の食サービスの利用ニーズ」が異なることがわかりました。
ロバストでは食材の買い出しから調理まですべて自分で行われますが、プレフレイル・フレイルでは「重いものは宅配サービスを利用している」などの実態があり、外部の食サービスの利用ニーズが高まります。一方で、「旬の食材選びを楽しむ」などの行動は共通してあり、このことが低い健康度でも多品目摂取が維持されている要因である可能性が示唆されました。

在宅でのフレイル予防につながる事例も―旭化成ホームズが入居者の実態調査を報告

健康度別 多品目摂取の割合・食欲有無・食事の用意(健康度と食事との関連性)

健康度の後退と比例して、家族との交流頻度が増える一方、友人との交流が減少。交流の変化がフレイル化の兆候をはかるバロメーターのひとつに

交流では、健康度が低いと家族との交流が多くなり、友人との交流が少ないことが特徴です。家族と週1回以上交流のある比率は、ロバストからプレフレイルで14pt多くなっています。友人との交流では、ロバストとプレフレイルでは差がほぼありませんが、プレフレイルからフレイルでは14.2pt少なくなっています。一方で、「ヘーベルVillage」内の他入居者との交流では、健康度による差は小さくなっています。
交流に着目したケーススタディの結果も、同様の傾向を示す事例があり、健康度によって交流の「範囲」が異なることがわかりました。ロバストでは、学生時代の友人や会社のOB、ボランティア活動など、旧縁や地域コミュニティでの交流が活発な一方、プレフレイル・フレイルでは家族や「ヘーベルVillage」内での交流への言及が見られ、身近な環境での交流が充実している様子が見られました。

在宅でのフレイル予防につながる事例も―旭化成ホームズが入居者の実態調査を報告

健康度別 家族との交流・友人との交流・「ヘーベルVillage」内での交流(健康度と交流との関連性)

日常の生活行動を「運動」のチャンスとする事で、自宅に居ながら運動の機会を確保することが重要

データ分析とケーススタディより、健康度が低くても、強度の低い運動には取り組んでいる様子が明らかになりました。「健康度が低いと運動をしなくなる」のではなく、「低い健康度では運動の強度が下がる」というのが生活実態であると考えられます。インタビュー調査の結果、「元気なのは、食事を作るから」という意見が見られました。家事も家の中での活動を維持する重要な「運動」であると捉えることが可能で、家の中での活動をなくさないことが重要であると考えられます。

在宅でのフレイル予防につながる事例も―旭化成ホームズが入居者の実態調査を報告

食事好きな人は食をきっかけとした交流でいっしょに外出するなど、運動・食事・交流のどれか一つが好きならその他と組み合わせることでフレイル防止効果がアップ

調査では、交流を通じて、運動が充実した事例や、交流を通じて食事が充実した事例などが見られました。「ヘーベルVillage」内での交流をきっかけに、地域活動である「公園まで歩く会」に定期的に参加するようになった(case2)や、地域の体操教室に週1回参加するようになったという事例が報告されました。どちらも、他入居者とのつながりを起点に、地域で行われる運動の取り組みの参加を実現していることが注目されます。自分一人で新しいことを始めるハードルを、交流によって下げているのではないかと考えることもでき、フレイル予防を実現するうえでの重要な要素ではないかと考えられます。
「ヘーベルVillage」内で気の合う入居者同士でうなぎの出前を頼み一緒に食べたり、公園まで散歩したり、ランチのために外出する(case4)などの事例も見られました。うなぎの出前に関しては「1つでは頼みづらく声をかけあって頼めてよかった。」の記述もあり、交流があったからこその食事の充実であったと考えられます。
また、「お花見」などの楽しみとセットになっている点も、生活の充実という観点から注目されます。このように、自分の好きなことや得意なこと、現状で行っていることをきっかけとして、運動・栄養・交流が強化される可能性が示されました。

在宅でのフレイル予防につながる事例も―旭化成ホームズが入居者の実態調査を報告

※調査報告書はこちら https://www.asahi-kasei.co.jp/j-koho/kurashi/report/K059.pdf

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