介護・福祉施設へサービスを提供する企業のための事例動画・ツール制作サービス

 

高齢者と赤ちゃん型ロボットのふれあい効果はどれくらい?

高齢者と赤ちゃん型ロボットのふれあい効果はどれくらい? ICT・テクノロジー

赤ちゃん型ロボットはどこまで高齢者を癒してくれる? そのふれ合いが認知症高齢者(要介護者)とその介護者に及ぼす効果を検証する長期的な実験が始まりました。その概要を取り上げます。
  

スポンサーリンク

赤ちゃん型ロボット かまって『ひろちゃん』

最初に今回の“主人公”のひとつとなる赤ちゃん型ロボットを紹介します。
名前は「ひろちゃん」(かまって『ひろちゃん』)。国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府相楽郡精華町 https://www.atr.jp/)とヴイストン(大阪府大阪市 https://www.vstone.co.jp)が共同開発したもので、2020年1月から5,000円(本体価格、税別)で販売されています。
いわゆるコミュニケーションロボットですが、そのなかでも比較的安価な価格設定なのは、もともとが要介護者に1人1台提供しえるロボットを前提とされていること。ロボットの権威である大阪大学特別教授でありATRフェローの石黒浩氏(ATR石黒浩特別研究所 所長)が提唱した人のミニマムデザイン(※1)のコンセプトをもとに開発され、人間の赤ちゃんの存在感を伝える“インタラクティブドール”と位置付けられています。

赤ちゃん型ロボット「かまって『ひろちゃん』」
ひろちゃんは、赤ちゃんサイズのぬいぐるみで、要介護者に好きな表情や顔を想像してもらうために、顔はありません。ひろちゃんの声は、赤ちゃんらしさを強く感じさせるために、1歳頃の人間の赤ちゃんの録音音声を使用しており、要介護者が揺らすなどの働きかけに対して、笑い声や泣き声、喃語(乳児が発する「あっあっ」や「ばぶー」のような意味のない発声)を発します。
顔、服のカスタマイズ例

6ヵ月の実験を通じて効果を徹底分析

今回の実験は隆生福祉会(大阪府大阪市)と科学技術振興機構(JST、埼玉県川口市)の協力のもとに実施され、要介護者が赤ちゃんをあやす行為を「ひろちゃん」で疑似体験することで、生きがい作りや癒しの効果があるか、介護者の負担を軽減できるか検証するもので、2020年10月下旬から6ヵ月におよぶ長期間の運用実験となります。
  
「ひろちゃん」の開発会社のひとつであるヴイストンは「要介護者1人に1台のひろちゃんを提供し、長期間、実際の介護業務の中でひろちゃんを利用してもらいます。この実験を通じて、要介護者がひろちゃんと飽きずに長期間関わってくれるか、癒やしの効果があるか、また、要介護者とひろちゃんとのふれあいの副次的な効果として、介護者の負担軽減の効果があるか、などを明らかにします。」と実験の背景を伝えています。
  
隆生福祉会が運営する介護施設「特別養護老人ホームゆめパラティース」(兵庫県尼崎市)の要介護者10名程度を被験者とした予備実験を行い、被験者数や施設数を増やして本格的な実験を行う予定です。
  
コロナ禍の影響によるふれあう機会の激減、感染リスクを減らすための負担の増加など、現場での喫緊となる課題の解決への期待も膨らみます。同時に今後の展開として、ヴイストンでは、
・実験の状況を紹介したり、ひろちゃんを使った介護レクリエーションの方法を紹介するWebサイト(ひろちゃんコミュニティサイト)を開設
・ひろちゃんの長期的な導入で得られるノウハウに基づく現場での運用マニュアルの作成
・ひろちゃんを効果的に利用するためのセミナーの開催
などを計画しているといいます。
  
要介護者への癒しに人形を使う取り組みは「ドールセラピー(※2)」と呼ばれ海外でも積極的に取り入れられていますが、「ひろちゃん」を通して要介護者と介護者を支援する「インタラクティブドールセラピー」の創出を目指すとしています。
  

(※1)人の存在を感じるための最低限の要素のみで人工システムをデザインするアプローチ。
(※2)赤ちゃん人形を認知症高齢者に渡し、あやしてもらうことで、癒し効果をねらったセラピーの1つです。ドールセラピーで使用する人形は、基本的に声を出したりといった働きかけをしません。また、実際の赤ちゃんにそっくりの人形を用いることが多いです。

タイトルとURLをコピーしました