株式会社ベネッセホールディングス(本社:岡山県岡山市)が1月5日、「ベネッセ ウェルビーイングLab(ラボ)」(以下:ラボ)の設立を発表しました。幸福学専門家・前野隆司氏、ウェルビーイング研究者・石川善樹氏がフェローとして参加 一人ひとりの多様な価値観の交流、ウェルビーイングへの理解を深める機会創出を目指します。
ウェルビーイングの注目が高まってきた
ウェルビーイング(well-being)とは「幸福」「健康」という意味がある言葉で、世界保健機関(WHO)憲章の前文の一節がその定義として引用されます。
“健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。”
そうしたウェルビーイングをテーマとした製品やサービスが登場しつつあり、社員のエンゲージメントやモチベーション向上を目指しビジネスに導入する企業も増えつつあるようです。
“高齢者とウェルビーイング”も大きなテーマです。
昨年9月にMIHARU(東京都渋谷区)がシンガポールのビジネスクリエーションファームVivid Creations Pte Ltdと共催で実施したカンファレンスイベント『Age Well Japan 2022』は、「ウェルカム高齢化社会!」をテーマに、シニア世代のウェルビーイングと新たなシニア像の創造をリードする各界のキーパーソンたちが議論を展開するなど、盛況を博したようです。
サイトやワークショップ等でふれる機会提供
いろいろな視点でウェルビーイングへの関心が高まるなか、これまでもサステナビリティやSDGsが目指す方向であるWell-Being(よく生きる)を理念に実践してきたベネッセが「ベネッセ ウェルビーイングLab」を設立、ウェルビーイングの在り方を社会と共創することを目指し、これまで培ってきた知見・リソースを活用したサイトでの情報発信と、ワークショップなどのリアルな対話・理解の機会提供を行うものです。
社外有識者として、幸福学の専門家である慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司氏、ウェルビーイングに関する研究者である予防医学研究者の石川善樹氏をフェローとして招致し、2023年2月に予定するオープンセミナーを起点に、子どもから学生や社会人、子育て世代、高齢者などさまざま対象としたワークショップなども企画していくとしています。
同Labの所長を務める常務執行役員ESG・サステナビリティ推進本部長の岡田晴奈氏は次のように述べています。
「私たちは、“よく生きる”を企業理念に掲げ、赤ちゃんからお年寄りまで、人の一生に寄り添って、その方の好奇心や向上意欲を支援していくことで、社会とこれからの時代のウェルビーイングを実現していきたいと考える企業グループです。
ウェルビーイングのかたちは人によって違うはず。でも一人ではわからないこともあるから、ウェルビーイングの専門家の方をフェローに迎えながら、ウェルビーイングでありたいと願うさまざまな方とともに一緒に考えていきたいと思います。様々な価値観に触れ、思いもよらない見方や考え方を知ることでワクワクすることが起きるかもしれません。こんな情報があったらいいな、こんな活動をやってみたいなど、あなたの声をお聞かせください。これからのウェルビーイングを一緒に創っていきましょう。」
フェローコメント
前野 隆司氏
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授
84年東工大卒。86年東工大修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。
『もともと会社名がベネッセ(=よく生きる=ウェルビーイング)であるベネッセさんがウェルビーイングLabを開設されるという必然を心強く思います。フェロー就任に際し、世界中の人々の平和と幸せのためにこのラボの活動の進展を大いにサポートさせていただくことを誓います。また、ラボの発展と世界への貢献を心より応援しています。私たちは、次世代の人類に自信を持ってバトンを渡すために、誰もが「よく生きる」世界を作ることに注力すべきです。未来は私たちにかかっています。いま日本は人口が減少し経済が停滞し閉塞感に包まれているという見方もありますが、私はそうは思いません。経済成長に偏りすぎていた時代から、「よく生きる」こと第一優先の時代へ。産業革命以来の大変革期にあって、日本は産みの苦しみをそろそろ終え、ウェルビーイング推進をリードする国として復活するときです。和の国(Land of peace and harmony)のこのラボから、世界を変えましょう。』
石川 善樹氏
予防医学研究者、医学博士
東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。公益財団法人Wellbeing for Planet Earth代表理事。
『よく生きる(Well-being)とは、刻々と変わる自身や環境に対して、適応し続けていくということです。だからこそ、Well-beingという単語には、現在進行形を意味する「-ing」が含まれています。ゆえに、「よく生きるとは何か?」という問いは、何か固定的・絶対的な答えがあるわけではなく、自身の状況や置かれた環境によって、多様な方向性が存在し得るということでもあります。一方で、それほど動的な概念であるがゆえにWell-beingは捉えにくく、様々な持論やデータが氾濫し、わかりづらさや混乱の原因ともなっています。
以上の背景を踏まえ、わたしが本ラボに期待したいのは、「スタンダード的な存在」になることです。言い換えれば、みんな違ってみんないい、というスタンスをとらないということです。もちろん、一人一人の「よく生きる」があってしかるべきです。しかし、よく生きるための「土台」については共通項が得られるはずですし、その土台を足掛かりとして、多くの人がそれぞれの「よく生きる」に向かって歩みを進めていける。そんなラボになったら素晴らしいなと期待しています。』
ベネッセ ウェルビーイングLab
https://www.benesse-hd.co.jp/ja/well-being/