VR技術を活かした新たな障がい者支援事業として企画されたイベントがクラウドファンディングで目標額の3倍強(346%)を達成、この秋の開催が決定しました。テクノロジーによる福祉支援の新たなアプローチとしての注目が高まります。
クラファン達成で初開催「障がい者がつくるVRアート展覧会」
主催は千葉県浦安市で障がい福祉サービス事業所を展開する社会福祉法人千楽(ちらく)。2021年から「福祉×VR」を切り口に、福祉現場でのXR活用の第一人者である東京大学先端科学技術研究センター・登嶋健太氏、VRアーティストとして話題のせきぐちあいみ氏監修のもと障がい者支援事業を進めています。今回クラウドファンディングを実施したイベントは、その支援事業の一環として企画されたものです。
「仮想現実」とも称されるVR(バーチャル・リアリティ)は、“仮想空間(*1)に入り込み、現実のように体験できる”という技術。VRと聞くと、ヘッドセット(ゴーグル)をつけてゼスチャーするかのごとく体を動かしているシーンが思い浮かぶでしょうが、あれはゴーグル内で見える仮想世界にいる自身(アバター)を操作しているもので、介護分野でも疑似体験や運動などレクリエーションへの応用に期待も高まっている技術です。昨年LINEが実施したリサーチでは、VRの認知率は90%に達したとの結果も出ています(*2)。
VRアートは仮想空間に描く3Dアート
そんな仮想空間での芸術を意味する「VRアート」となると、まだ馴染みがないかもしれません。ひと言で表すなら、“VR空間に3Dで絵を描くこと”となります。360度広がるVR空間上に描くVRアート作品はもちろん立体的で、完成した作品は360度、自由な角度から見ることができます。
具体的にはヘッドセットをつけ仮想空間を見ながら、専用のアプリケーション(Google『Tilt Brush』)を用いて描きます。
この企画に参加されているせきぐちあいみ氏は“おそらく世界初のVRアーティスト”とされ、海外でも活動の場を広げているVRアートの第一人者です。
クラウドファンディング「障がい者がつくるVRアートを楽しく体験できるイベントを開催したい!」
今回、千楽が実施したクラウドファンディングは、事業所の利用者が制作したVRアートをだれでも楽しく体験できるイベントの実施費用を募ったもの。50万円とした目標金額は公開翌日に突破、最終益には募集31日間で137名の支援者から3倍強(346%)となる173万円の支援金が集まり、無事イベント開催が決定しています。
千楽がアート(創作)プログラムを積極的に取り入れているのは、当事者の個性や心境へ創作に反映され、言語やコミュニケーションが苦手な方も、過程や行為を含めて窺い知ることができるとの理由からです。
VRは、何かしらの理由で外出が自由にできない場合も出てくる施設利用者を認識し、VRを活用したリハビリプログラムやアクティビティの研究開発にも着手しており、VR旅行など利用者と体験するイベントも実施、好評を得ている様子。「現実世界では乗り越えることが難しい障害も、バーチャルという第2の世界では簡単に乗り越えることができて可能性を感じています」とし、今回のクラウドファンディングでの大きな反響は、今後の「福祉×VR」展開に好影響をもたらすことになりそうです。