IoTソリューションを提供するAgx（東京都港区）など4者は、体表温センサーや温湿度センサーから収集したデータから人の体温リズムを分析し、心身状況の把握や介護負担の軽減などを目的とした実証実験を行いました。
介護施設における体表温測定共同実証実験モニタ期間終了へ
今回の実証実験は、一般社団法人ORINAS（東京都北区）、株式会社Agx社、社会福祉法人敬友会グループホームひまわり（岡山県岡山市）、アヴニール・ワークス株式会社（東京都台東区）の4社合同で行われたもの。
各種介護施設、災害避難所で新型コロナやインフルエンザなどに感染した際の心身状況の把握、初期対応への連携、日常生活のモニタによる介護負担軽減などを目的としています。
グループホームひまわりの利用者に装着した体表温センサーと、居室等に配置された温湿度センサーからのデータを収集、Agxが所有するIoTシステムを活用し情報化とその利用を検証したもので、その第1段階となるモニタ機関が終了したことが報告されました。
現在これらのデータに加えて、グループホームひまわり関係者の協力により、基本情報、日常生活上のケア記録、食事量、飲水量、排泄量、バイタルデータ（BP/KT/P/SpO2）、アクティビティ、夜間の睡眠状況ほか、期間内の各種詳細なケアに関する情報を加味し、利用者装着の体表温データとの関係性などの分析を開始しています。
また、気象庁発表資料による、外気温、湿度、天気、気圧も含め、重層的に分析するとしています。
これらの結果は学術的な発表等をおこなう予定で、関連する専門家、研究者の意見を問うこととしています。
◎一般社団法人ORINAS：社会福祉・介護福祉・地域福祉分野等における学術的分析及び実践援用を担当
◎株式会社Agx：実証実験フィールド向けに最適化されたIoTシステム・IoTデバイスを提供
◎社会福祉法人敬友会グループホームひまわり：実証実験フィールドの提供および被験者との実験の合意の取り纏めを担当
◎アヴニール・ワークス株式会社：実証実験においての運用支援を担当
Agx社有するデータ可視化システム「ThingBridge VISION」概念図
体表温センサー着用の様子（男性：手首幅5cm）
実証実験は、温湿度センサーを居室計３箇所、共有スペース計2箇所の設置を行い、加えて、設置箇所に居住する利用者3名に腕時計様式にて手首によるセンサー装着を行いました。
センサー装着は、バンド含め10ｇと非常に軽量であり、かつ幅2.5cmと日常生活上の負担を極力排除された、違和感等のない作りとなっています。（写真）
居室内の温湿度データをグラフ化したもの
手首に装着された体表温データをグラフ化したもの
体温リズム可視化の意義について
今回テーマとなっている体温は、一日をとおして起こる変動リズムがあり、そこから睡眠の状態など把握することも可能です。
何らかの要因で睡眠覚醒のリズムと体温のリズムの位相がずれてしまうと、うつ病、不安障害の発症、日中の抑うつリスク要因、睡眠障害等への影響があると考えられています。
体温リズムを可視化し分析することは、日中の生活やケアの見直しなどを含めた包括的な支援につなげることが可能となります。
人の体温リズムのイメージ （環境省H21年：ヒートアイランド対策の環境影響等に関する調査業務報告書P4図1-5より転載）
介護施設では、不眠がある認知症高齢者が夜間に施設内を歩行してしまう場合など、ワンオペなど手薄となりがちな夜勤職員の負担を増大しかねず、夜間歩行の抑止のために服薬などで沈静化を図るケースも少なくないといいます。
この服薬による沈静化は、日中の覚醒状態に影響を及ぼすこともあるとされ、ふらつきや転倒を誘発したり、日中の傾眠状態から夜間の不眠の悪循環を招くなど、高齢者の尊厳を阻害されてしまう可能性を引き起こすことも懸念されています。
これらのことから、まずは要介護高齢者などの快適生活の構築、介護職員への負担軽減のために、要介護高齢者の体温等の生体情報の常時モニタリングから体温変動のリズムの可視化で、日中の生活やケアの見直しなどを含めた包括的な支援につなげることを目指しています。
関連リンク
・プレスリリース全文
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000038068.html
・株式会社Agx
https://agx.jp/
https://thingbridge.jp/vision/
