[Medtec Japan]まだまだ収束を見ない新型コロナ感染症。その感染リスクを減らすために各所で様々な対策が取られています。感染症はまだ記憶に新しいSARSやMERSなど含め、10~40年周期で大規模流行の傾向があるとか。ここでは、そうした感染症対策に残される、導入のための費用や介護者の負担といった課題が解消されそうな陰圧装置に注目します。
現場のニーズに応え、使い捨て陰圧ドームを開発
ソーシャルディスタンス、テレワーク、オフピーク通勤、マスク着用、アクリル板等々、コロナ禍におけるニューノーマル時代に、生活の新しいモデルが生まれました。とはいえ、なかなか収束を見ない新型コロナ感染症対策の課題は山積しているのが現状です。
高齢者の多い介護の現場では面会制限など“つながり”が制限されている状況で、ケアの在り方が問われているといえます。
非接触で入居者を見守るICTシステム、遠隔での面会を可能にするオンラインシステムなどを導入し対応している施設もありますが、医療の現場に比べると費用の関係もあり思うに任せない現場が多いのも事実。重症化リスクの高い高齢者がどこより多い現場といえ、ワクチンの期待が高まる一方で、感染症対策にまだまだ頭を悩ます問題です。
そんな現場に、ひとつの解決策となるような装置が開発されています。
外部に空気を漏らさない陰圧環境をベッド上で簡単につくれ、しかも使い捨てという手軽さが特長の陰圧クリーンドーム「ハッピーバード」がそれ。
昨年来、新型コロナ対策に、組み立て式や移動式など簡易タイプの陰圧装置(ブース)が開発されていますが、さすがに使い捨てタイプは初めてでしょう。
・陰圧とは外よりも気圧が低い状態のこと。空気は気圧が高い方から低い方へ流れようとするため、気圧が低い方の空気は高い方への移動ができません。
・その性質から、ウイルス等で汚染された可能性のある空気を陰圧環境内に隔離、外に逃がさないようにして感染を防止します。
・陰圧環境内は清浄空気にするエアフィルタであるHEPAフィルタを用い、外にはキレイにした空気を排出します。
開発は、eロボティクス(福島県南相馬市)と鳥取大学発ベンチャーのメディビート(鳥取県米子市)が共同で取り組み、福島および鳥取の大学附属病院の医療関係者からの医療ニーズを取り込みながら進めてきたもの。
eロボティクスは福島県医療福祉機器産業協議会の会員でもあり、昨2020年にハッピーバードが生まれるきっかけとなる簡易陰圧装置「可搬型陰圧クリーンドーム」を開発しています。
「医療現場などに販売していくなかで、“使い捨てできる手軽さ”“より安いもの”という要望が出てきて、それに応えるように今年から開発を続けてきました」(eロボティクス 事業本部長 皆川好則氏)。
「ハッピーバード」は、紙素材によるボックスと樹脂素材ポリオレフィンを用いた身体を覆う透明シートで構成、充分な陰圧を確保する形状が実現されています。
紙ボックスの両サイドは、手を差し入れて開閉できるケアポートを設置して、医療処置を可能としています。
ドーム内の空気を清浄するHEPAフィルタ。とっさの使用時にも充電が不要な乾電池バッテリーが採用されています。
紙ボックスを閉じた状態。大量にストックする際も場所を取りません。
感染症対策の新たなケアモデルとして期待
紙素材ということもあって、装置としての重々しさがなく圧迫感が軽減されるなどの細やかな配慮もなされています。
また、ポリオレフィンはポリエチレンやポリプロピレンで知られる構造を持つ樹脂の総称で、燃やしても有害物質が発生しないクリーンな素材が採用されています。
共同で開発した鳥取のアカデミックベンチャーであるメディビートは、紙製フェイスシールドなど、感染対策に使い捨て可能な商品開発の実績があり、そのノウハウをハッピーバードに取り入れたといいます。
商品名について皆川氏はにこやかに「福島の“福”と鳥取の“鳥”を合わせてハッピーバードにしました」と教えてくれました。
昨年来の新型コロナ感染症の拡大で、その対策が重要課題としてあらゆる場面で顕在化してきました。インフルエンザ然り、新型コロナも消滅するものではないため、“使い捨て”という手軽さは介護現場や災害時の避難所などでの新たなケアモデルとしての普及が期待されます。
▼関連リンク
株式会社eロボティクス https://www.e-robo.jp/
販売に関する情報 https://www.birdsview.jp/happy-bird (バーズ・ビュー株式会社)