低価格なIoTサービスを展開するベンダが、在宅介護機器メーカーと連携し、その安全性をIoTで遠隔監視する目的で行ってきた実証実験が成功したことを発表しました。ベンダ側では「この応用で利用者様の「見守り」や「感染症予防策」にも役立つ可能性が開かれた」としています。
バッテリー劣化状況確認のほか、エラー予測、再起動、見守りも可能に
今回の実証実験を行ったのは、IoTサービス「obniz(オブナイズ)」を展開する CambrianRobotics(東京都豊島区)と、階段昇降機の世界的メーカーであるドイツのティッセンクルップ・アクセス社の日本法人、ティッセンクルップ・アクセス・ジャパン(東京都港区)。2019年の3月から開始した「パーソナルIoT を活用しての在宅介護用階段昇降機(家庭用いす式リフト)の実証実験」で、複数台の機器の使用状況、運転の安定性やバッテリー寿命の把握、機材トラブルの同時遠隔監視を実行してきました。
2020年には、バッテリーの未充電検出のほかに、対象機器の不具合を検知すると検査員にアラートメールを送信する機能の追加実験も実施し、アラートメール機能によって、コロナ禍での検査員のご訪問を控えながら、電話のみで円滑にご対応できることも確認が行えたとしています。
長期にわたるコロナ禍においては、このアラートメール機能によって検査員とご本人・ご家族との接触を可能な限り回避することで、「感染症予防策」にもなり得ることが考えられます。
CambrianRoboticsでは「今回の実証実験の成果により、日本全国のティッセンクルップ・アクセスの階段昇降機を一元管理できるだけでなく、ご利用者様の「見守り」や「感染症予防策」にも役立つ可能性が開かれました。」とコメントしています。
CambrianRoboticsが提供する「obniz」のテクノロジーは、デバイスごとの設定や保守・運用が不要なため、短期間かつ低コストでIoT化が実現できるうえ、複数台の対象機器をまとめてクラウドにつなぎ、後からプログラム修正や変更を行うことも可能になっています。
また、今回の実験で対象としたティッセンクルップの階段昇降機は、日本の住宅に多い「狭く急勾配な階段」であっても、1本のレールで常に椅子の水平を保って昇り降りができる点が高く評価されています。
この階段昇降機に「obniz」のIoT技術を組み合わせることで、遠隔から機器そのものの安全性や利便性を確保できるだけでなく、運転時刻や頻度などの生活パターンを把握してご利用者の「見守り」も行えるようになります。
既存の介護機器へも簡単に実装可能なため、それらの利便性をも高めることができます。
実証実験での検証結果について
2019年3月に開始した実証実験の期間中は、4台の対象機器の運転状況、バッテリーの寿命などを同時に遠隔監視しました。バッテリーの使用状態の推移は電圧を示すグラフから確認でき、「通常時」や「バッテリー劣化時」、さらに「未充電状態」まで把握できました。
▲一日の使用状況(実際のグラフより):階段昇降機使用中はバッテリー電圧が急速に下がり、停止後すぐに回復する
▲バッテリー能力が下がっている状況(実際のグラフより):バッテリー電圧の最低値が徐々に低下している
▲階段昇降機の未充電状態(実際のグラフより):運転時にバッテリー電圧が下がる状態が、数十分にも亘って続いている
同時に、この推移をデータとして蓄積していき、それらのアルゴリズムを解析することで、バッテリーの寿命予測まで行える見通しが立ちました。これは、「obniz」の技術で、複数台の対象機器の保守・運用からデータ確認、解析までクラウド上でリアルタイムに行えることによる成果です。