体に負担のかかる作業をアシストするスーツ「Every」を開発・販売するイノフィス(東京都新宿区)が、コロナ禍における介護従事者の働く環境調査を実施、その調査結果を公開しました。昨年から続く新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、介護従事者の働き方はどう変化したのでしょうか?その一端を取り上げます。
20歳以上の介護従事者がコロナ禍の現状を露呈
新型コロナウイルスとともに暮らす生活が強いられてから、すでに1年半が経過しました。その間、新しい生活様式や行動の変化が進むと同時に働き方も変化。特に社会生活を支える仕事に携わるエッセンシャルワーカーの方々は、厳しい環境下での働き方が強いられています。
そうしたエッセンシャルワーカーを対象に、「働き方・働く環境」についての調査を実施したのがイノフィス。2014年、介護従事者からの要望を反映したマッスルスーツEveryを開発、移乗介助や体位交換など腰へ負担がかかる作業、排泄介助など長時間のつらい中腰姿勢時の負担を軽減するほか、電力不要で防水性もあることから入浴介助にも役立っています。
今回の調査で、介護の現場は特にリスクの高い高齢の利用者様が多いこともあり、違った形での不安や負担を抱えながらの仕事であることが浮き彫りになった、とコメントしています。
今回の調査は同社の「Muscle Mag」に掲載されています。
Muscle Mag TOPページ https://musclesuit.co.jp/blog/
【調査レポート】コロナ禍で介護の現場は変わったか?結果
60%以上が「コロナ禍で負担が増えた」
コロナ禍が長引く中、介護に従事する方はどんな負担を、どの程度感じているのでしょうか。コロナ禍において肉体的・心的負担がどれほど増えたと感じたかを聞いた結果です。
肉体的負担が「増えた」(「とても増えた」+「やや増えた」)と回答した人は60%
心的負担が「増えた」(「とても増えた」+「やや増えた」)と回答した人は75%
その割合は「肉体的負担が増えた」と回答した人より+15pt多かった。
このなかで、「負担が増えた」と回答した人に、その理由として当てはまるものを質問したところ、「負担」(「とても負担」+「やや負担」)であると回答したもののうち75%と一番大きな割合となったのが、「自分が職場にコロナを持ち込まないか」という不安でした。
今までも介護というのは負担の大きい仕事として知られていました。しかし、この結果から、特に介護職特有の仕事環境での気遣いや不安感という心的負担が以前より増えている、という結果となりました。
それ以外にも「プライベートでの会食や外出の制限」(69%)や「消毒・検温など、コロナ対策に時間をとられる」(66%)が高い傾向が見られ、介護従事者ならではの気遣いや対策が、心身に負担を与える原因として挙げられました。
コロナ禍をきっかけに退職を検討する人も
あわせて、新型コロナは介護現場の離職や人手不足に影響したのかを知るため、コロナ禍をきっかけに退職を考えたことがあるかも調査しています。
結果、全体の割合としては多くないものの、16%の人が「新型コロナをきっかけに退職を考えたことがある」と回答しました。全体の約半数は「退職を考えたことはない」と、コロナ禍においても誇りを持って介護職に携わる姿勢がうかがえるポジティブな回答ですが、一方で「コロナ禍が原因ではないが退職を考えたことがある」という回答も約4割にのぼっており、慢性的な人手不足・新規採用の難しさが取り上げられる業界だけに、コロナ禍をきっかけにさらなる人手不足が進むのではないかという懸念も予想されます。
なお、新型コロナをきっかけに退職を考えた理由として挙げられていたのは「清掃・除菌など仕事の量が増えたこと」(30.8%)に加え、「職員1人あたりの利用者(要介護者)数が増え、肉体的な負担が大きい」(19.2%)と、肉体的負担を原因に挙げる人が全体の5割を超える結果になりました。
介護現場のコロナ対策は「十分ではない」が5割超
また、「職場の新型コロナ対策は十分に行われていますか?」の質問には、84%とほとんどの職場で新型コロナ対策は取られていました。ただし、5割を超える人がその対策は「十分でない」と感じると回答しています。
先の「心的負担が増えている」というデータには、このような職場での対策不足もその負担に拍車をかけているのかもしれません。また、新型コロナ対策に時間を取られるようになっていることに加えて、介護スタッフ1人当たりの担当利用者の数は減ることはないため、利用者1人当たりにかけられる時間がどうしても少なくならざるを得ないという面からも、介護現場におけるさまざまな側面での負担の深刻さがうかがえます。
国・自治体の新型コロナウイルス支援策は浸透している?
最後に、国や自治体が行っている新型コロナウイルスに関連する各種支援策は、介護業界にどの程度浸透しているかを聞いてみました。結果は、約半数の介護施設、在宅介護の方々がなんらかの支援策を利用していることが分かりました。その一方で、半数ほどが利用しておらず、うち23%ほどは「支援策についてよく分からない」という回答を得ました。