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マッスルスーツで自立した介護リハビリを-大学ベンチャーと介護事業者が共同実証

マッスルスーツで自立した介護リハビリを-大学ベンチャーと介護事業者が共同実証 介護・福祉

コロナ禍において介護施設では、行動制限からのADL(日常生活動作)低下が大きな課題となっています。将来的には理学・作業療法士のリソース不足も懸念され、リハビリテーションの自動化・仕組化が重要に。その対策にマッスルスーツを活用した共同実証が進んでいます。

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マッスルスーツ装着者の負荷を軽減する「空気圧」に着目

マッスルスーツで自立した介護リハビリを-大学ベンチャーと介護事業者が共同実証

共同実証を進めているのは、介護施設等を運営するメグラス(愛知県名古屋市)とマッスルスーツEveryを開発したイノフィス(東京都新宿区)。イノフィスはマッスルスーツの開発・販売を目的に設立された東京理科大発のベンチャー企業。研究室でマッスルスーツの研究開発を開始後、実用化のめどが立った2013年に設立されました。

開発したスーツのひとつ「マッスルスーツEvery」は、現場作業員などを対象に腰への負担軽減のために開発されたものですが、メグラスは負荷を軽減するための機能となる「空気圧」に着目、それを逆にトレーニングの負荷と捉えてリハビリテーションに活用した実証評価に共同で乗り出したということです。

入居者4名に対し実施した評価では、ADL指標の一つである安定した自立歩行につながる「連続腿上げ回数」の平均伸び率が380%を記録、明らかな改善が見られました。その他の指標を用いた評価でも数値の向上が見られ、「マッスルスーツEvery」のリハビリテーションツールとしての効能を見いだすことにつながっています。

ADL低下と理学・作業療法士不足への懸念から行動

この両社がタッグを組んだ背景には、コロナ禍によって強いられる活動制限、療法士などのリソース不足への懸念がありました。

新型コロナウイルスの感染拡大は、メグラス運営の介護施設内でも外出禁止、面会制限、マッサージなど訪問系サービスが停止と、入居者の活動範囲が大幅に限られることに。
そうした制限から介護施設内で入居者のADL低下の事例が見受けられたと言います。

ADL向上のためのリハビリテーションを行うのは、主に理学療法士・作業療法士ですが、そうした有資格者は増加傾向にあるものの(※1)、介護施設に従事する理学療法士は有資格者全体の8%(※2)、作業療法士は有資格者全体の17%(※3)にとどまっているとのデータがあり、リソース不足が懸念される要因となっています。

※1: 厚生労働省「理学療法士・作業療法士の需給推計について」(2019年4月5日)https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000499144.pdf
※2:公益社団法人日本理学療法士協会「国民の皆さま向けサイト」(2021年3月)https://www.japanpt.or.jp/activity/data/
※3:日本作業療法士協会誌 第102号「2019 年度 日本作業療法士協会会員統計資料」(2020年9月)https://www.jaot.or.jp/files/page/jimukyoku/kaiintoukei2019.pdf

自立度の高い人を考慮し「Every」を活用

マッスルスーツEveryを選んだのは、作業者の腰への負担軽減のために開発されたモデルで、装着者の動きにあくまで自然に追随する仕様となっている点。高齢者のリハビリテーション用としては機能訓練モデルがありますが、これは自立度の低い人の動きをアシストするタイプ。メグラスが運営する介護施設では自立度の高い入居者が多いこと、コンプレッサが無く着脱しやすかったことなどからEveryを採用したということです。

マッスルスーツで自立した介護リハビリを-大学ベンチャーと介護事業者が共同実証

2021年7月から11月に4名の入居者を対象に行った実証評価では、明らかな筋力アップと下股機能の向上が見られたと言います。

「SS5(立ち座りを5回繰り返し、それにかかる時間を測定する検査)」と「TUG(椅子から立ち上がる→3m先のコーンで旋回する→戻ってきて再度椅子に座るのにかかる時間を測定する検査)」では実施前より時間が短縮。
「開眼片脚立位(目を開けた状態で片脚立ちで姿勢を保ち、持続できる時間を測定する検査)」では実施前に比べ時間が延長、「連続スクワット回数」「連続腿上げ回数」では回数の増加が見られ、全評価方法にて運動能力の向上に関する効果が現れています。

マッスルスーツで自立した介護リハビリを-大学ベンチャーと介護事業者が共同実証

マッスルスーツで自立した介護リハビリを-大学ベンチャーと介護事業者が共同実証

参加した入居者のひとりは、これまで不安定だった歩行器歩行が本実証を通して安定し、スタッフの見守りがなくてもご自身で自由に歩行できるようになったと言います。

そうした下股機能向上のほかが見られたほか、

  • 身体機能が徐々に改善することによる、生活に対するモチベーションの向上
  • 評価の結果データを意識し記憶しようとすることによる、認知機能の向上
  • 運動をすることによる、不眠の改善

といった成果も見られたという今回の共同実証。手軽で効果的なリハビリテーションの今後の新たな可能性に期待されるものとなったと言えそうです。

株式会社イノフィス https://innophys.jp/
株式会社メグラス https://meglus.co.jp/

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