介護事業者の経営支援を目的に、ICTサービス「カイポケ」を運営するエス・エム・エス(東京都港区)と青森銀行(青森市)が業務提携し、地域の介護事業者に対して経営安定や質の高い介護サービス提供に貢献し、地方の活性化にも繋げていこうと相互連携を開始します。事業所の倒産件数が増えるなか、環境改善への期待が持たれます。
倒産数が過去最多に。介護事業の厳しさが増す
調査会社の東京商工リサーチ(東京都千代田区)が公開した、2020年「老人福祉・介護事業」(2020年12月3日付)の倒産状況によると、倒産数112件に達し、介護保険法が施行された2000年以降で過去最多だった2017年と2019年の111件を上回り、最多件数を更新しました。
調査レポートによると、次のように分析されています。
「ヘルパー不足が続く「訪問介護事業」が52件(構成比46.4%)と半数近くを占めた一方、デイサービスなどの「通所・短期入所介護事業」が36件(同32.1%)と増加した。
従業員5人未満が75件(同66.9%)、負債1億円未満が90件(同80.3%)と、小・零細事業者を中心に推移している。
国や金融機関などの新型コロナ支援で踏みとどまり、新型コロナ関連倒産は10月までに累計3件にとどまっていた。しかし、11月単月は4件と急増し、全体の件数を押し上げた。コロナ支援効果が薄れ、介護業界でも息切れの兆しがうかがえる。」
超高齢社会に突入し介護のニーズが増大している一方で、必要性が増す事業者は減少傾向にあるわけです。
また新型コロナウイルス感染拡大に伴い、利用控えによる売上減少や、感染予防・拡大防止策による費用増加など、介護事業者を取り巻く事業環境は厳しさを増しています。
介護事業所の経営安定化やM&Aによる事業承継支援、多角化支援を実現
そうした環境を改善しようと、手を組んだのがエス・エム・エスと青森銀行。両社は、地域の介護事業者に対して経営安定や質の高い介護サービス提供に貢献できるよう活動を開始します。
エス・エム・エスが提供する「カイポケ」は、介護事業者の経営・業務の効率化や働き方改革をサポートするクラウドサービスで、会員数は全国約29,150事業所を突破しています。
介護業務以外の間接業務を削減する業務支援機能、勤怠・給与・労務や会計などの経営・運営支援機能、ファクタリングやスマートフォンレンタルサービス、介護業界向けM&Aサービスなど、ICTを活用した40以上のサービス・機能を展開しています。
青森銀行は、多様化するニーズに中長期的に対応できる従来の銀行の枠を超えた「コンサルティング・グループ」への変革を進めており、地域経済の発展への貢献を目指した取り組みを推進しています。
この両社による今回の業務提携では、経営安定化を必要としている介護事業者への経営支援サービス「カイポケ」の紹介や、介護・医療の事業承継などの案件紹介について、相互に連携するもの。
エス・エム・エスの介護業界に特化したソリューション提案と青森銀行の地場ネットワークを活かし、介護事業者の業務効率化や、M&Aのサポートによる後継者不在といった課題解消、事業拡大といったニーズへの対応を目指すものです。
また、今後は、介護業界向けセミナーや個別相談なども実施予定としています。